── 犬と人の未来を守る、私たちの選択

PRA(Progressive Retinal Atrophy=進行性網膜萎縮症)は、
遺伝的に網膜が萎縮・変性していき、最終的には失明に至る恐ろしい目の病気です。

この病気はゆっくりと進行しますが、発症年齢や進行の速度には個体差があります。
早いケースでは生後数ヶ月で発症することもあり、現時点では完治できる治療法は存在しません。


発症のサインと進行

PRAの初期症状としてよく見られるのは、「夜盲症」です。

  • 暗い場所や夕方の散歩で動きがぎこちなくなる

  • 物にぶつかるようになる

  • 夜のお散歩を嫌がるようになる

このような変化が見られたら、目の異常を疑う必要があります。
ですが、PRAは遺伝性疾患であり、発症する前に“防ぐ”ことが可能です。


遺伝子検査で、未来は変えられる

現在では、PRAを引き起こす遺伝子が特定されており、遺伝子検査によって発症のリスクを知ることができます。
検査の結果は、以下の3種類に分類されます。

結果 意味 注意点
クリア(ノーマル) 正常な遺伝子のみを持つ 発症なし/遺伝の可能性なし
キャリア 保因者。自身は発症しないが異常な遺伝子を1つ持つ 発症なし/交配相手に注意
アフェクテッド 発症が確定している 子孫に確実に遺伝するため、繁殖には向きません

正しい交配で、発症は防げる

遺伝子の組み合わせによって、子どもに遺伝するかどうかが決まります。
そのため、ブリーダーの「交配の選択」が未来の健康を左右します。

  • クリア × クリア → すべてクリア。理想的な交配

  • キャリア × クリア → 発症なし。子は50%の確率でキャリア

  • キャリア × キャリア → 25%の確率でアフェクテッド。避けるべき

  • アフェクテッドとの交配 → 相手がクリアでも、子は全てキャリア。※繁殖は極力避けるべき

発症してしまった命は、取り戻すことができません。
だからこそ、「そもそも発症しない交配」を行うことがブリーダーの責任だと私たちは考えています。

日本のダックスが抱える現実

日本は、ダックスフンドの登録頭数において世界有数の規模を誇る国です。
しかしその一方で、PRAをはじめとする遺伝性疾患が多く存在するのもまた事実です。

  • 十分な知識のないまま繁殖を行ってしまうケース

  • 利益を優先した無計画な乱繁殖

  • 遺伝子検査の重要性を理解していないブリーダーの存在

こうした現状が、PRAを抱える子を次々と生み出してしまっています。


命は「人間の選択」にゆだねられている

野生動物は自然淘汰の中で、強く、健康な遺伝子だけが次世代へと残されていきます。
しかし、犬の繁殖はすべて「人の手」によって行われています。

だからこそ私たちは、命の選択を委ねられている者として、真剣に学び、誠実に判断し続ける責任があると考えます。


シルトクレーテの姿勢と実践

私たちは遺伝子検査を行い、クリアまたは慎重な組み合わせのもとにのみ繁殖を行っています。

「かわいいから」「スタイルが良いから」だけではなく、
未来の健康・次世代への遺伝を最優先に考える繁殖こそが、ブリーダーとしての本質だと信じています。


最後に

PRAの発症は、決して運ではありません。
そして、遺伝病で苦しむ子犬が生まれるかどうかは、私たち人間の“知識と選択”にかかっています。

どうか、この病気の存在を知ってください。
そして、命のバトンをつなぐために必要なことを、一緒に選び、考えていけたらと願っています。