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トラストブリーディングとは?
犬を「つくる」のではなく、命を預かる。
そんな思いから、私は長年にわたって“トラストブリーディング”という考え方を続けてきました。
この言葉は、私たちシルトクレーテが日本で初めて提唱したもので、
すでに10年以上、日々の繁殖の現場で実践しています。
意味としては、ヨーロッパで使われる
“Responsible Breeding(責任ある繁殖)” や
“Ethical Breeding(倫理的繁殖)” に近いものです。
つまり、トラストブリーディングは日本語で表現された、
世界標準の繁殖哲学と言っていいでしょう。
犬を「生産物」としてではなく、「命」として扱う。
それがすべての出発点です。
従来のブリーディングの現実
これまで多くの繁殖現場では、
「母犬が発情したから」「今ならかけられる」
そんな理由で交配が決まることが少なくありませんでした。
本来なら、母犬の体調や心の状態、血統や性格の相性を見て判断するべきです。
けれど実際には、次の繁殖機会を逃したくない、売れる時期に合わせたい――
そうした“タイミング優先”の繁殖が当たり前のように行われてきたのです。
そして生まれた子犬は、生後2〜3ヶ月で新しい家へ。
けれどこの時期は、まだ体も心も未完成です。
母犬や兄弟と過ごす中で「犬としての生き方」を学ぶ大切な時間。
それを十分に経ないまま離れてしまうと、
心が不安定になりやすく、人を信じる力も育ちにくい。
その結果、吠える・噛む・怖がる――
飼い主にとっても悩みが多く、信頼関係を築くまでに時間がかかる。
犬も人も、どちらも幸せになれない。
さらにブリーダー自身も、
成長を見届ける機会を失い、学びが次の世代へ活かされにくくなります。
それが日本の繁殖の構造的な問題であり、
飼育放棄や保護犬の増加といった社会問題にもつながっていると感じています。
トラストブリーディングが目指していること
トラストブリーディングでは、責任の始まりを「繁殖前」に置き、
引き渡しの基準を“育成を終えた1歳以降”としています。
つまり、「つくって売る」のではなく、
“育てて託す”という考え方です。
この1年間で、子犬は心と体、そして社会性を育てます。
群れの中で生きる力を学び、人と共に過ごす穏やかさを覚え、
性格が落ち着いた、信頼できる犬に育っていきます。
私たちはその成長を見ながら、
それぞれの子に合った家族を探します。
血統だけでなく、その子の性格、空気感、反応――
そうした“命の手触り”を感じながら。
トラストブリーディングによって、可能になることは多くあります。
- 健康・遺伝・性格を見極めた正しい繁殖判断
- 群れと人の中で育てる安定した社会化
- 家族との相性を大切にした最適なマッチング
- 譲渡後も続く生涯サポート
これは、見た目の良い犬をつくるためではありません。
人と犬が生涯、幸せに暮らすための仕組みです。
トラストブリーディングと従来型の違い
| 観点 | トラストブリーディング | 従来のブリーディング |
|---|---|---|
| 繁殖判断 | 健康・遺伝・性格を総合的に見極める | 発情期や販売時期を優先 |
| 育成期間 | 1歳までじっくり育てて譲渡 | 生後2〜3ヶ月で出荷 |
| 社会化教育 | 群れと人の中で心を育てる | 学習途中で環境が変わる |
| 飼い主との関係 | 終生サポート・信頼関係を築く | 販売で関係が終了 |
| 目的 | 命と文化の継承 | 流通と効率の確保 |
| 犬の位置づけ | 家族・信頼のパートナー | 商品・消費の対象 |
トラストブリーディングの7つの段階
トラストブリーディングには、
「生まれる前」から「一生」までの明確なステップがあります。
1. 繁殖前 ― 命を生む前に考える
血統や性格、健康を総合的に見極める。
「かけない勇気」もまた、繁殖者の責任です。
2. 妊娠期・出産期 ― 母犬の心と体を守る
安心して出産できる環境を整え、母犬の穏やかさを最優先に。
3. 新生期(0〜3週) ― 命の芽を見守る
人はあくまでサポート役。母犬と子の時間を尊重します。
4. 幼犬期(3〜12週) ― 群れと人から学ぶ
兄弟や大人の犬、人との触れ合いを通じて社会性を身につけます。
5. 成長期(3〜12ヶ月) ― 個性を見つめて育てる
体つきも心も整ってくる大切な時期。
その子に合った関わり方を見極めます。
6. 譲渡(1歳以降) ― 家族へのバトンを渡す
十分に育った犬を、最も合う家庭へ。
迎える側も、犬自身も、心から安心できる形で。
7. アフターケア ― 共に生きる時間を支える
譲渡はゴールではなく、スタートです。
家族としての歩みを、生涯見守っていきます。
命と信頼をつなぐために
トラストブリーディングは、繁殖の方法論ではなく、生き方の選択です。
「この子を迎えて本当に良かった」
「この家で生きていて本当に幸せだ」
そう感じてもらえる関係を、一組でも多く生み出したい。
犬の未来を信じ、人の優しさを信じる。
その“信頼”こそが、トラストブリーディングの原点です。つまり、トラストブリーディングとは命に敬意を払う世界共通の考え方であり、
それを日本で、日々の繁殖と育成を通じて実践しているのが私たちシルトクレーテなのです。
トラストブリーディングの実践へ
トラストブリーディングとは、
犬を“生産物”ではなく“命”として扱う繁殖哲学です。
けれど、それは言葉や理念だけではありません。
日々の暮らしの中で、命に誠実に向き合い、選び、育て、つなぐ──
その一つひとつの積み重ねによって形になります。
ここからは、シルトクレーテが実際に行っている
トラストブリーディングの7つのステップをご紹介します。
どの段階も、犬たちの健やかな未来と、家族との信頼を守るために欠かせないプロセスです。
①【選ぶ】親犬の選定と交配計画
命をつなぐための“選ぶ力”。
FCIスタンダード、遺伝、気質、構成を総合的に見極め、
無理のない繁殖を計画します。
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②【育てる】母犬と子犬のケア・出産環境
命の誕生を“守る”責任。
母犬の心身を第一に考え、安心できる環境で出産・育児を支えます。
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③【育む】社会化と群れの中の教育
犬らしく生きる力を“育む”。
群れの中で学び、他の犬や人との関わりを通して信頼と落ち着きを育てます。
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④【整える】フード・水・環境・日々のケア
内側から健康を“整える”。
高品質なフードや水、微生物ケアで体質と被毛を整え、自然治癒力を高めます。
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⑤【見極める】性格・構造の最終判断と譲渡基準
未来の家族に託す“責任”。
性格・構造・心の成熟を丁寧に見極め、最良のマッチングを行います。
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⑥【つなぐ】ファミリーとの関係と生涯サポート
迎えた後こそ始まる“信頼の関係”。
譲渡後のサポートやイベントを通じて、家族と犬の幸せを見守ります。
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⑦【未来へ】血統継承と次世代への責任
50年、100年先を見据えたブリーディング。
世界に誇れる血統を守り、次の世代へ受け継ぐ使命を果たします。
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すべての命は、
選ばれ、守られ、育まれ、そして未来へと受け継がれていきます。
それが、シルトクレーテのトラストブリーディングです。
