ダックスフンドは、多彩な毛色や毛種を持つ魅力的な犬種です。
レッド、クリーム、チョコ、ブラックタン、ダップル、ブルー、ワイヤー、ロング、スムース……。その多様性に魅了される方も多いでしょう。

けれど、被毛の見た目だけで選んでしまうことが、その子の一生、そして命の質そのものに大きな影響を与える可能性があるということをご存知でしょうか?

この記事では、ブリーダーとして30年にわたる経験をもとに、毛色・毛種と健康、繁殖の本質的な関係性をお伝えします。


「見た目」だけでは選べない理由がある

— 被毛と命の質の深い関係

色素希釈色(ブルー・イザベラ)と健康リスク

ブルーやイザベラなどの希少色は、美しい見た目とは裏腹に、皮膚疾患や脱毛症(CDA)などの遺伝的なリスクを抱えることがあります。
色の魅力だけで選ばれることの多いこれらのカラーは、慎重な繁殖管理と強い倫理観が求められる毛色です。

ダップル同士の交配で生まれるダブルダップルの危険性

まだら模様が人気のダップルですが、ダップル同士を掛け合わせると、白斑や視力・聴力障害などを引き起こす「ダブルダップル」が生まれる可能性があります。
このような組み合わせは、健康への重大なリスクを伴うため、避けるべき繁殖とされています。

異毛種・異サイズの交配がもたらす不安定さ

毛種の異なるダックスフンド(たとえばスムース×ロング、ワイヤー×ロング)を交配することで、被毛の質が中間的・不安定になったり、性格や体格の予測がつきにくくなることがあります。

また、ミニチュアとカニンヘンなどサイズの異なる組み合わせも、骨格や成長予測の難しさを招き、繁殖ラインを乱すリスクがあるのです。


Schildkroteが「レッド」にたどり着いた理由

Schildkroteのルーツは、1990年代半ばの個人的な経験にあります。
15歳でJKCに犬舎登録を行い、17歳(1997年)で初めて自分の交配による出産を経験しました。

その当時、目指していたのは「美しいクリームのダックスフンド」。
可憐で上品な毛色に強い魅力を感じていたからです。

しかし、2004年頃のある経験が、その価値観を大きく変えていきます。

クリームとレッド、それぞれの子犬が生まれた瞬間に感じた、
骨格の強さ、筋肉の張り、泣き声の力強さ、表情の違い──
それらがまったく異なっていたのです。

このとき、「命の健やかさは、毛色によって違うのではないか?」という直感が、
経験として明確な確信に変わりました。

ちょうどその頃、“レッドのドイツダックス”との運命的な出会いが訪れます。

導いてくれたのは、ドイツダックスの持つ機能美・健全性に深く魅了されていた師匠の存在でした。
イギリス系のクリームダックスが全盛期を迎えていた時代に、フォルムも気質も「猟犬としての原型」をとどめたドイツのレッドのダックスは、強烈な存在感を放っていました。

それまでに何年もかけて構築してきた血統ラインがありました。
しかし、その出会いは、過去の積み重ねをすべて手放し、血統を一新するほどのインパクトを持つものでした。

そして今から20年ほど前、Schildkroteは、チョコタンも、ブラックタンも、クリームもやめて、レッドの道を歩むことを選びました。


「人気色」ではなく、「信頼できる命」を選ぶという考え方

もちろん、色は大切です。けれど、見た目の可愛さや希少性が、その子の暮らしやすさや健康を保証してくれるわけではありません。

私たちが送り出したいのは、「この子と出会えてよかった」と、飼い主が心から思える命です。

だからこそ、色や毛質を語るときには、“どのような背景・判断基準のもとで、その交配が行われているか”*を一緒に見てほしいと願っています。


Schildkroteの哲学と無料レポート

Schildkroteでは、健康な命をつなぐための交配ルールを明文化し、以下のような組み合わせは行っていません。

  • ダップル×ダップル
  • ブルー・イザベラなど色素希釈色同士の交配
  • 異毛種・異サイズの交配(特にカニンヘン×ミニチュアなど)

そして、ブリードスタンダードを軸とした明確な判断基準をもって、安定した性格と構造を持つレッドのダックスフンドを中心に繁殖しています。

このページが、「見た目で選ぶことのリスク」や「命を預かる重み」に、ひとりでも多くの方が目を向けるきっかけになれば幸いです。

**上記のページ内容は、2000年から掲載している以下のページについて、最新の情報と知見で再構成したもです。**

ダックスフンド部会が推奨する「ダックスフンドの毛色交配」について

ダックスフンド部会が推奨する毛色

スムースヘアー、ロングヘアー

単色:レッド、レディッシュイエロー、イエロー
黒毛(シェイド)が散在しているものも単色に含まれる
レッド色が濃く鮮明であることが望ましい
鼻と爪は黒

二色:ブラック&タン、ブラック&イエロー
チョコレート&タン、チョコレート&イエロー
タンまたはイエローのマーキングが適所に適度にあることが望ましい
ブラックの毛色は鼻と爪は黒
チョコレートの毛色は鼻と爪はブラウンまたは黒に近い色

特色:ブリンドル、ダップル
ブリンドルはレッドまたはレディッシュイエローまたはイエローの地に黒い縞模様
ダップルはブラックの毛色に不規則なグレイの斑
斑は大き過ぎず偏りのないものが好ましい

ワイヤーヘアー

ワイルドボア(明るいものから暗色のものまで)、デッドリーフ
スムースヘアーの単色、二色、特色も有効

ダックスフンド部会が推奨しない毛色
FCIブリードスタンダード(犬種標準書)の毛色の項に記載されていない毛色

推奨する毛色交配

ブラック&タンex レッド  ブラック&タンex レディッシュイエロー
ブラック&タンex イエロー  ブラック&タンex ブラック&タン
ブラック&タンex ブラック&イエロー ブラック&タンex チョコレート&タン
ブラック&タンex チョコレート&イエロー  ブラック&タンex ダップル
レッドex レッド  レッドex レディッシュイエロー
レッドex イエロー  レッドex ブリンドル

推奨しない毛色交配

(1)部会が推奨しない毛色同士の交配
(2)部会が推奨する毛色と部会が推奨しない毛色との交配

 例として
  褪色毛色同士またはその毛色との交配
  レッド以外の単色
  (ソリッドブラック、ソリッドチョコレートまたはソリッドブラウン)
  同士またはレッド以外の単色との交配

(3)部会が推奨する毛色同士の組み合わせでは次の交配は推奨しない

  レッド、レディッシュイエロー、イエローとダップルの交配
  チョコレート&タン、チョコレート&イエローとダップルの交配
  ブラック&タン、ブラック&イエロー、チョコレート&タン、
  チョコレート&イエローとブリンドルの交配
  ブリンドルとダップルの交配

(4)ダップル同士の交配は禁忌

推奨しない理由

毛色は大変大きく健康に係わりがあります。
毛色を決定しているのは二種類のメラニン(ユウメラニン、フェオメラニン)で、色素細胞で生成されます。
ダックスフンドには約11~13種類の毛色遺伝子(7種類が解明)が存在していますがその毛色遺伝子は色素細胞に様々に働きかけます。

また、メラニンを生成する色素細胞は、聴覚神経、視覚神経、内臓(心臓、腸、副腎)の神経などを形成する神経細胞の一部と同じ神経細胞から分化して形成されるので、胎児が母体の中で成長する過程において神経系の形成に不可欠な細胞と言われています。

例えば毛色の遺伝子の中には「体の一部に色素細胞を全く配置しない」といった情報を持ったものがあります。
この遺伝子が働いた場合、必要に場所に色素細胞の存在を欠くことになり、感覚細胞の形成と機能発達の過程に支障が生じ感覚器官の障害が発生したり、内蔵に影響を与えた場合には危篤な内臓疾患を抱えた固体が生まれる可能性が高確率であると考えられます。

また色素細胞で生成されるメラニンの主な理由は、外的刺激から体(細胞の核)を守ることです。「色素細胞の働きを抑制または著しく制限する」といった情報をもった毛色遺伝子が働いた場合には、メラニンの生成が阻害され紫外線や薬剤などの刺激に非常に弱く虚弱な体質になってしまいます。

単色レッドの褪色毛色(クリーム)はアルビノ系遺伝子の影響でフェオメラニンの生成が抑制されています。
ユウメラニンへの影響はほとんどないため、鼻や爪、目縁、パッドなどが黒く発色している場合があり、「色素が濃い」と勘違いされやすいのですが、ユウメラニンとフェオメラニンが両方とも抑制されず正常に機能する事が重要で、この毛色の交配は何代も重ねていくとアルビノ化が進みます。

ブラックやチョコレートが褪せた毛色(ブルー、イザベラ、フォーン)は色素希釈遺伝子の影響でメラニン色素が希釈され、体質的に虚弱で、非常に皮膚が弱い(CMA=Color Mutant Alopecia)ことが知られています。
さらにWダップル(ダップル同士の交配で生まれ、ホワイトが入る)は、聴覚障害、視覚障害、重篤な内臓疾患など様々な形で致命的な影響がでます。
これらの毛色はメラニンの働きが正常に機能しないことが原因で、体(=命)を守る仕組みとして発現させてはならないものです。

※ 注意:表記されている毛色はダックスフンドにおける毛色表現で、同じ毛色表現でも他犬種においてはダックスフンドの毛色と違う場合があります。

単色レッドの毛色の比較 参考資料

血統書にクリームと表記されていても、その毛色は本来イエローであることが大変多い現状にあります。

イエローとクリームの違いは毛色を熟知したブリーダーでも判断が容易ではありませんが、FCIブリードスタンダードではクリームは毛色の項に記されていない毛色で、ブリードスタンダードに表記されていない毛色は失格となっています。

レディッシュイエローとは、赤みがかった黄毛色で頭部から背~腰部にかけて、または体の1/2上部は比較的赤みが強く発現しています。特に春から夏にかけてはより濃くなり、黒い差し毛が多くなることもあります。

イエローとは、赤みの少ない黄毛色です。頭部から背~腰部にかけてまたは体の1/2上部は比較的濃く発現し、胸部~腹部にかけてはやや薄い毛色になることもあります。春から夏にかけてはより濃く、黒い差し毛が多くなることもあります。

クリームとは、毛色に赤みがほとんどなく黄色みの少ない淡い毛色です。
春から夏にかけては頭部から背~腰部にかけて、または体の1/2上部に黄色みが増し、ベージュ色のように濃くなりますが、赤みが強く発現することはありません。黒い差し毛が季節によって増減することがあります。

ダックスフンドの異毛種交配

ダックスフンドのコート(ヘアー)は3種類=スムース、ロング、ワイヤー

推奨する交配

 同毛種同士の交配
  スムースex スムース、ロングex ロング、ワイヤーex ワイヤー

推奨しない交配 

(1)熟慮する必要がある交配
  スムースex ロング、スムースex ワイヤー

(2)禁忌の交配
  ロングex ワイヤー

推奨しない理由

毛質の遺伝子記号を使って説明します。
優性と優勢:優性(dominant)は同じ遺伝子座(シリーズ)の中での優劣優勢(上位の=epistatic)とは異なった遺伝子座にある遺伝子同士での優劣
ダックスフンドのコート遺伝子はLシリーズとWhシリーズの混在で三毛種が存在しています。

L:L(スムース)、l(ロング)

L(スムース)はl(ロング)に対して優性で、ヘテロで発現します。
スムースはLLwhwhで表記され、LL優性ホモwhwh劣性ホモで本来のスムースになります。

ロングをキャリーしたスムースはLlwhwhで表記され、Llへテロwhwh劣性ホモでロングキャリーのスムース同士の交配からはロングが生まれることがあります。

ロングはllwhwhで表記され、ll劣性ホモwhwh劣性ホモで本来のロングです。
いずれもWhシリーズにおいては「ワイヤーでない=whwh」という遺伝子情報を持っていなければなりません。

Wh;Wh(ワイヤー)wh(ワイヤーでない)

Whは優性で、LLWhWh(LとWh双方が優性ホモ)で本来のワイアリーコートになります。
ワイヤーダックスフンドの場合、異毛種交配をすると劣性遺伝子をキャリーして本来のワイアリーコートとは、かけ離れたワイヤーが発現する事があります。

例えば、ロングをキャリーしたワイヤー(F1)は本来のワイアリーな堅い毛質が損なわれ、スムースと交配して「ワイヤーでない」whをキャリーする(F1)と毛量の乏しいコートになる事があります。

ダックスフンドのサイズ交配

ダックスフンドのサイズは3サイズ スタンダード、ミニチュア、カニンヘン

推奨するサイズ間交配

  スタンダードex スタンダード
  ミニチュアex ミニチュア
  カニンヘンex カニンヘン

推奨しないサイズ間交配

  スタンダードex カニンヘン

繁殖に関する基本的知識

同毛種間サイズ間の交配が最も理想で、色素の濃い骨格構成の正しい固体を選択し、ブリーディングする事が望ましい。

ダックスフンドは中世の時代から地下での狩猟に適した特異な体型を求めて作出されてきました。
地上においても有用な狩猟犬として能力を発揮してきた犬種です。

現代の日本ではダックスフンドが狩猟する事はほとんどありませんが、その気質や体型、骨格構成はダックスフンドとして作出されてきた経緯から逸脱することはなく、犬種の理想像として明記されているブリードスタンダード(犬種標準書)により近づける為の繁殖努力をしなくてはなりません。

健康に係わりのある色素を重視し、より健全で骨格構成の正しい固体を選択し「犬種の向上」を目的とした繁殖を心がけましょう。

また、ダックスフンドのみならず全ての純粋犬種には血統に起因する遺伝疾患や犬種特有の疾患が存在することは事実です。それらの原因因子ができるだけ次世代に受け継がれないように熟慮し、注意深く繁殖する事がブリーダーとしての重要な責務でもあります。