「ダックスフンドがよく吠えるのは“無駄吠え”だから、しつけで止めさせましょう」。
そんな情報を見かけることは多いかもしれません。

チャイムが鳴るとテレビの音が聞こえないほど吠える、夜中に突然うなり声をあげる…。
飼い主さんにとっては困ってしまう場面ですが、本当にその声は“無駄”なのでしょうか?

ダックスフンドが発する「声」には、明確な理由があります。
それは単なる困りごとではなく、彼らのルーツに基づく本能の表れであり、何らかの意思表示です。

この記事では、ダックスフンドの吠えを「問題行動」として見るのではなく、本質的に理解し、共に幸せに暮らすための向き合い方を解説します。


目次

  1. 【そもそも「無駄吠え」ってなに?】
     └「無駄吠え」という言葉の背景と誤解
     └本当に“無駄”なのか?行動を見直す問いかけ
  2. 【ダックスフンドが吠える理由は「本能」にある】
     └猟犬としての役割=声は「仕事道具」
     └警戒心と番犬気質
     └健全な本能の表れとしての吠え
  3. 【吠える声は“サイン”である。聞き分けできていますか?】
     └声色と心理の対応表
     └日常シーン別の吠えとその意味
  4. 【テクニックの前に必要な「関係性」の土台】
     └なぜマニュアル通りのしつけがうまくいかないのか?
     └「人に気を使える犬」に育てるために
     └本能を満たす「ガス抜き」も忘れずに
  5. 【まとめ — 吠えを通じて深まる関係性】
     └その声の奥にある思いを受け取るということ
     └信頼関係があって初めて届く「大丈夫だよ」

1. そもそも「無駄吠え」ってなに?

「無駄吠え」という言葉の背景と誤解

「無駄吠え」という言葉は、日常でもネット上でもよく使われます。
一般的には、「理由がないのにただ吠える」「飼い主が困るタイミングで吠える」といったニュアンスで使われがちです。

しかし実際には、犬が理由もなく吠えることはほとんどありません
何かに反応して、あるいは不快や不安のサインとして、声をあげているのです。

私たち人間が「無駄だ」と判断しているだけで、犬にとってはすべて意味を持つ行動なのです。

本当に“無駄”なのか?行動を見直す問いかけ

もしあなたが「うちの子、よく吠えるな…」と感じているとしたら、
「うるさい!」と叱る前に、一度立ち止まってこう問いかけてみてください。

「なぜこのタイミングで吠えたのか?」

それは「外敵を追い払うため」かもしれないし、
「大切な縄張りを守ろうとしている」のかもしれません。
あるいは「ストレスがたまっている」「何か満たされていない」ことのSOSという可能性もあります。


2. ダックスフンドが吠える理由は「本能」にある

猟犬としての役割=声は「仕事道具」

なぜダックスフンドの声は、体のサイズの割に太く、よく響くのでしょうか?
それは彼らが元々、アナグマ猟のために改良された狩猟犬だからです。

地中の巣穴に潜り、獲物を追い詰めたとき、地上にいるハンター(飼い主)に自分の位置を知らせるために、
「吠え続けること」が彼らの重要な仕事でした。

つまり、ダックスフンドにとって吠えることは、命令に背く行為ではなく、
体に染み込んだ優秀な本能なのです。

警戒心と番犬気質

また、ダックスフンドには非常に強い警戒心と縄張り意識があります。
これも狩猟犬時代の名残であり、外敵から自分や仲間を守るための機能です。

インターホンの音や玄関の足音、すれ違う人や犬に反応して吠えるのは、
「ここは自分の縄張りだぞ!」「怪しい存在が来たぞ!」と、警告し追い払うための防衛反応(仕事)と言えます。

現代の家庭犬として暮らす中で、その役割は必要とされなくなりましたが、犬自身のDNAは変わりません。
「声が大きい」「よく吠える」とされるのは、むしろ本能が健全に働いている証とも言えるのです。


3. 吠える声は“サイン”である。聞き分けできていますか?

ダックスフンドは声帯が発達しているため、声のトーンで感情を使い分けるのが上手です。
「吠える」を一括りにせず、その音色に耳を傾けてみましょう。

代表的な声色と心理

声の特徴犬の心理翻訳例
「ワンッ!ワンッ!」(高く短い)要求・歓喜「ねえねえ!遊ぼう!」「ごはんちょうだい!」
「ウーッ…バウッ!」(低く太い)警戒・警告「近づくな!」「怪しい音がするぞ!」
「キャンキャン!」(甲高く連続)恐怖・パニック「痛い!怖い!助けて!」
「クゥ〜ン…」(鼻にかかった声)不安・甘え「寂しいよ…」「誰かいないの?」

日常シーン別の吠えとその意味

  • 来客・インターホン → 警戒・縄張り意識(侵入者を追い払おうとしている、群れに知らせている)
  • 留守番中 → 分離不安・寂しさ(群れから離れる恐怖の吐露)
  • 散歩中の他犬への吠え → 社会化不足、または恐怖(攻撃される前に相手を遠ざけたい)

どのケースでも共通しているのは、
「吠えるという行動には、必ず『理由』や『表現したい意思』がある」という点です。


4. テクニックの前に必要な「関係性」の土台

なぜ、マニュアル通りの対応が逆効果になるのか?

よくあるしつけのアドバイスに「犬の前に割って入って止める」「『ダメ』と叱る」というものがあります。
しかし、これらが効果を発揮するのは、飼い主と愛犬の間に強い信頼関係がある場合だけです。

関係性がまだ築けていない状態で、飼い主が慌てて制止しようとしても、犬にとってはその意図がうまく伝わらないことがあります。

  • 「自分が頑張って警戒しているのに、なぜ止められるの?」
     → 飼い主の行動が混乱や戸惑いを生み、逆に緊張を高めてしまうことも。
  • 「飼い主も大きな声を出してる=一緒に興奮してるのかも?」
     → 結果として、犬の中では「警戒すべき状況が続いている」と受け取られ、吠えがエスカレートしてしまう場合があります。

つまり、テクニックを使う前に、“この人の言うことなら聞こう”と思える関係性が必要なのです。

「人に気を使える犬」に育てるために

普段の生活の中で、愛犬はあなたをどれだけ意識しているでしょうか?

  • アイコンタクト:名前を呼んだらすぐに目が合うか?
  • 待つ姿勢:ご飯や散歩の前に、興奮せずに指示を待てるか?
  • 日々のルール:遊びの始まりと終わりを飼い主が決めているか?

こうした日々の積み重ねで、「飼い主の判断」を優先する姿勢=信頼の土台ができあがります。

本能を満たす「ガス抜き」も忘れずに

エネルギーが余っていたり、本能が満たされていないことも「吠え」の原因になります。
本能を抑えるのではなく、別の形で発散させることが大切です。

  • ノーズワーク(嗅覚遊び):おやつを隠して探させる遊び。狩猟本能を満たし、脳を心地よく疲れさせます。
  • 散歩中の「におい嗅ぎ」:本能的に強く求められる行動です。
    匂いを嗅ぐことで「情報を集め、脳を使い、心を落ち着かせる」という意味があります。
    散歩の途中に「においタイム」を適度に設け、犬の欲求と飼い主のリードのバランスを保つことが大切です。

5. まとめ — 吠えを通じて深まる関係性

ダックスフンドの「声」は、彼らの意思表示です。
その声を「無駄だ」「うるさい」と一方的に遮断する前に、

「なぜそうしたのか?」
「今、僕たちの関係はどうなっているか?」

を見つめ直すきっかけにしてください。

テクニックだけで犬を黙らせることはできません。
日々の暮らしの中で、お互いに意識を向け合い、心を交わすこと。
そうして築かれた信頼関係があって初めて、あなたの「大丈夫だよ」という声が、
愛犬の心に届くようになるのです。

トラストブリーダー・Schildkroteの考える「吠え」との向き合い方

私たちSchildkrote(シルトクレーテ)が最も大切にしているのは、
犬の行動の背景にある「理由」を理解しようとする姿勢です。

吠えるという行動は、「困った癖」ではなく、
犬から私たちへのサインであり、語りかけです。

そして、そのサインの“質”や“強さ”は、
実は生まれる前の繁殖環境子犬期の社会化経験
さらには飼い主との関係性によっても大きく左右されます。

だからこそ、私たちは「吠えを強引にやめさせること」ではなく、
「なぜ吠えるのか」を一緒に考え、整えていける暮らしを何よりも大切にしています。


本能を理解し、本当の信頼関係を築くために

吠える=悪ではなく、
吠える=伝えようとしてくれている。

そう捉えるだけで、愛犬との関係は大きく変わります。

ダックスフンドという犬種の特性、育った背景、日々の生活、心の状態……
それらが複雑に絡み合って発せられる“声”を、
じっくりと受け止め、理解し、整えていく

そんな関係性を築いていくための考え方を、
私たちはこれからも伝え続けていきたいと考えています。

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