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なぜ日本では、子犬が「ガラスケース」に入れられて売られているのか?

ペットショップのショーケースに並ぶ小さな子犬たち。
可愛らしい姿に心を惹かれる一方で、「本当にこの売られ方でいいのだろうか?」と、
どこか違和感を覚えたことはありませんか?

世界では今、動物福祉や倫理の観点から「生体展示販売」を制限・禁止する国が増えています。
それに対して日本では、いまだに駅前やショッピングモールで犬が“商品”として並ぶ光景が当たり前。
なぜこのような違いがあるのでしょうか?

この記事では──

  • 日本で「ガラスケース販売」が広まった背景
  • 海外との比較と文化的な違い
  • 犬の行動学・健康から見た問題点
  • そして「本当に犬の幸せを考える迎え方」とは?

という問いに、専門的な視点から冷静に向き合います。

「今さらペットショップで買ったことを後悔すべき?」
「それでも信頼できるお店や育て方はある?」

そんな疑問にも答えながら、犬と人が共に幸せに生きるためのヒントを、丁寧に解説していきます。

目次

  1. なぜ日本では「ガラスケース」で子犬が売られているのか?
    • 展示販売が始まった歴史と背景
    • 現在の法律上の位置づけとは?(動物愛護法の規定)
  2. 本当に「日本だけ」なのか?世界の状況を冷静に見る
    • 欧米での販売禁止・制限の実例(フランス・アメリカなど)
    • 「すべて禁止されている」は誤解?国や地域で事情は違う
    • 「展示販売=悪」か?文化と制度の違いを整理する
  3. 「展示販売」が抱えるリスクとは?【行動学・福祉の視点】
    • 社会化期と適切な育成環境の重要性
    • 流通ストレスと健康リスクの問題
    • 「売れ残り」という構造的な課題
  4. 本当に問うべきは「どう迎えるか」の視点
    • ブリーダー・保護団体から迎えるという選択肢
    • 信頼できる育成環境とは何か?
    • 「選び方」よりも「育ち方」が未来をつくる
  5. すでに迎えた人ができる、これからの向き合い方
    • 「後悔」ではなく、「これからを大切にしたい」という気持ちに寄り添う
    • 社会化・信頼関係・健康を意識した日々のケア
  6. 信頼できる「良心的なショップ」の見極め方
  7. よくある質問(FAQ)
    • ガラスケースに入れて売るのは違法ではないの?
    • 海外ではどうやって犬を迎えるの?
    • 日本の法律は本当に甘いの?
    • ペットショップの犬は懐きやすいの?
    • 流通が短いと健康にどう影響するの?
    • 信頼できるブリーダーはどう探せばいい?

1. なぜ日本では「ガラスケース」で子犬が売られているのか?

展示販売が始まった歴史と背景

日本で子犬を「ガラスケースに入れて販売する」というスタイルが一般化したのは、1970年代以降のことです。高度経済成長期を経て都市部の人口が増え、核家族化が進む中で、「犬を飼う家庭」が急増しました。

このとき登場したのが、駅前やショッピングモールに店舗を構える「ペットショップ」。通行量の多い場所に店を出し、ガラス越しに「可愛い子犬」を展示することで、衝動買いを促す販売スタイルが確立されていったのです。

この形態は、いわば「効率と利便性」を追求した商業モデルでした。

  • 多数の犬種を常に取り揃える
  • 通りすがりに買ってもらえる
  • 小さなスペースで複数の犬を展示可能

結果として、「犬の本質的な性質」や「育成環境の質」よりも、見た目の可愛さや購入のしやすさが優先される構造が生まれました。

現在の法律上の位置づけとは?(動物愛護法の規定)

日本では、ペットショップにおける動物の販売や展示について「動物の愛護及び管理に関する法律(動愛法)」で一定の規定があります。

例:

  • 生後56日未満の犬猫は販売・展示してはいけない
  • 飼育施設には温度・湿度・衛生などの基準がある
  • 動物取扱業者は登録制、立ち入り検査もある

しかし、現行法では「店舗での生体展示販売自体」を禁止してはいません。そのため、法律に違反していない限り、ガラスケースでの販売は合法とされています。

つまり、「制度上の問題があるわけではない」というのが、現在の一般的な理解です。

2. 本当に「日本だけ」なのか?世界の状況を冷静に見る

欧米での販売禁止・制限の実例(フランス・アメリカなど)

多くの国では、動物福祉の観点から「ペットショップでの犬の展示販売」を法的に制限する動きが進んでいます。

  • フランスでは、2024年からペットショップでの犬猫の販売が全面禁止に。
  • アメリカの一部州(カリフォルニア・ニューヨークなど)では、ペットショップでは保護犬猫の譲渡のみが認められています。
  • ドイツやオーストラリアでは、生体販売は非常に限定的で、基本的にはブリーダーや保護団体を通じて譲渡される形が主流です。

これらの背景には、「命を商品として扱うこと」に対する社会的な抵抗感があり、福祉や倫理の視点から法律整備が進められてきた歴史があります。

「すべて禁止されている」は誤解?国や地域で事情は違う

とはいえ、すべての国が完全に禁止しているわけではありません。一部の国や地域では、条件付きでの展示販売が認められている例もあります。

  • 販売年齢の制限(例:生後8週未満は禁止)
  • 販売施設の設備・環境の厳格な管理
  • 認可を受けたブリーダー経由のみ販売許可 など

つまり、「欧米=完全禁止」というわけではなく、「制限の度合い」と「社会的な価値観の違い」があるという理解が必要です。

「展示販売=悪」か?文化と制度の違いを整理する

日本のペットショップは、都市部の高密度な生活空間と物流の発達、そして「手軽に飼える」という文化に支えられて発展してきました。

一方、海外では「犬を迎えること」自体がより慎重に行われる文化が根付いており、
「まず家族と相談する」「生活に合うか熟考する」「育成背景を確認する」などのプロセスが重要視されています。

つまり、本質的な違いは「販売スタイル」そのものではなく、
その裏にある「命との向き合い方」や「家族として迎える意識の差」にあるのです。

3. 「展示販売」が抱えるリスクとは?【行動学・福祉の視点】

社会化期と適切な育成環境の重要性

犬には、生後3〜14週の間にさまざまな刺激や経験を積む「社会化期」があります。
この期間に、人間・他の犬・物音・環境などに慣れることが、将来の性格や行動に大きく影響します。

しかし、ガラスケースでの展示販売では──

  • 狭い空間での長時間の隔離
  • 人との接触が限定的
  • 他の犬や物音への自然な慣れが不足

といった環境が多く、適切な社会化の機会が失われてしまいます。

これにより、将来的に「怖がり」「吠える」「攻撃的になる」などの行動問題を抱えるリスクが高くなると指摘されています。

流通ストレスと健康リスクの問題

日本のペット流通の多くは、以下のような構造です。

ブリーダー → ペットオークション → ペットショップ

この間に、子犬は何度も輸送され、長時間の車移動や新しい環境への適応を強いられます。

  • 車酔い・ストレス・下痢
  • 免疫力低下による感染症リスク
  • 食欲不振・体調不良

など、心身へのダメージは無視できません。

さらに、ペットオークションは「年齢が若いほど高く売れる」傾向があるため、生後すぐに親兄弟と引き離されるという育成上の問題も抱えています。

「売れ残り」という構造的な課題

展示販売では、「見た目」「月齢」「価格」が購入の大きな決め手となります。

その結果──

  • 成長して可愛さが減った
  • 価格が高くて売れない
  • 健康状態に問題がある

などの理由で「売れ残る子犬」が生まれます。

売れ残った子はどうなるのか?
→ 値下げ販売 → 引き取り業者 → 処分・返送という流れが一部では存在しており、「命の価値」が商業的に扱われる現実があります。

4. 本当に問うべきは「どう迎えるか」の視点

ブリーダー・保護団体から迎えるという選択肢

「ペットショップで買う」以外にも、犬を迎える方法は存在します。
むしろ、世界ではこちらの方が主流です。

  • 信頼できるブリーダーから直接譲り受ける
  • 保護犬や保護団体から迎える(譲渡)

ブリーダーから迎える場合は、子犬がどのように育てられてきたか、親犬がどんな性格なのかを知ったうえで迎えることができます。
一方で保護犬の場合は、過去の詳細な情報が分からないこともありますが、保護団体がその犬の性格や健康状態を観察し、譲渡前にしっかり説明してくれることが多く、安心して迎える体制が整えられています。(全てのブリーダーや保護団体が当てはまる訳ではありません)

信頼できる育成環境とは何か?

子犬の心身の健やかな成長には、以下のような条件が必要です。

  • 親犬や兄弟犬と十分な時間を過ごしている
  • 人とのふれあいを通じた社会化がされている
  • 清潔で落ち着いた環境で育てられている
  • 健康チェックやワクチン接種が適切に行われている

つまり、「売ること」よりも「育てること」に重点を置いた育成こそが、犬の未来を左右するのです。

「選び方」よりも「育ち方」が未来をつくる

私たちは、犬を「選ぶ」ことに意識を向けがちです。
見た目の可愛さ、価格、犬種の人気ランキング…。

でも本当に大切なのは、その犬がどんな育ち方をしてきたか
そして、どんな関係性をこれから築いていけるかです。

子犬の過去と未来に責任を持てる選択こそが、
人も犬も幸せになれる「本質的な迎え方」ではないでしょうか。

5. すでに迎えた人ができる、これからの向き合い方

「後悔」ではなく、「これからを大切にしたい」という気持ちに寄り添う

「ペットショップで買ってしまった…」
「もっと調べてから迎えるべきだった…」

そんなふうに過去を悔やむ声を聞くことがあります。

でも、本当に大切なのは、
今目の前にいる愛犬と、これからどう向き合うかです。

これまでどんな環境で育った犬でも、
飼い主との関係性や生活環境によって、
驚くほど穏やかで信頼に満ちた暮らしを築くことができます。

社会化・信頼関係・健康を意識した日々のケア

今からでも、できることはたくさんあります。

  • 少しずつ新しい刺激に慣れさせる(音、人、場所など)
  • ごほうびや優しい声かけを通じて信頼を深める
  • 食事・運動・健康チェックを丁寧に行う

毎日の積み重ねが、犬の行動や感情に良い変化をもたらします。
「育て直し」ではなく、「一緒に成長していく」という姿勢が、犬にとって何よりの安心になるのです。

過去の出自よりも、今の環境と関係性こそが大切

どこで生まれ、どこから来た犬であっても、
今の暮らしと、飼い主との関係性が健やかであれば、
犬は幸せを感じられます。

だからこそ、
「過去を悔やむ」のではなく、
「今できること」に目を向けてみてください。

6. 信頼できる「良心的なショップ」の見極め方

展示販売という形態そのものが問題視されることは多いですが、
一方で、「犬の幸せを本気で考えているショップ」も確かに存在します。

そのような良心的なショップには、次のような共通点があります。

「売らない」アドバイスができる

飼い主のライフスタイルや家族構成を丁寧にヒアリングし、
犬との相性が合わなければ「今は飼わない方がいい」と、
販売を見送る判断ができるお店は信頼に値します。

本当に犬のためを考えているからこそ、
「売ること」よりも「適切なマッチング」を優先できるのです。

社会化の時間を設けている

子犬をガラスケースに入れっぱなしにするのではなく、
店内のプレイルームで他の犬やスタッフと触れ合う時間をつくり、
人との信頼関係や社会性を育む取り組みをしているお店もあります。

これはまさに「育成」にも責任を持とうとする姿勢のあらわれです。

ルーツが明確である

どのブリーダーから仕入れたのか、
親犬の健康状態や性格はどうかといった背景を、
しっかりと開示してくれるショップは安心感があります。

「誰がどんな環境で育てた犬なのか」を説明できることは、
命を扱ううえで欠かせない信頼の土台です。

一生涯のサポート体制がある

しつけ相談や健康チェック、
トラブルへの対応など、
「売ったら終わり」ではなく、「迎えた後こそ大切」という姿勢を持つショップは、
飼い主にとっても心強い存在です。


こうした優良ショップは、業界を内部から変えていく重要な存在です。
私たち消費者がこのような店を選び、支持していくことが、
展示販売の在り方を少しずつ変えていく大きな力になります。

7. よくある質問(FAQ)

Q1:なぜガラスケースに入れて売るのは問題なの?

ガラスケースのような閉鎖的な環境では、
子犬が十分な刺激や人との触れ合いを経験できず、
社会化不足による行動異常(怖がり・吠える・攻撃性など)が生じやすくなります。

また、狭い空間で長時間過ごすことによるストレスや、
衛生・温度管理の不備による健康リスクも指摘されています。


Q2:海外ではどんな方法で子犬が販売されている?

多くの国では、ペットショップでの展示販売は行われていません。

  • 信頼できるブリーダーから直接譲り受ける
  • 保護団体・シェルターから譲渡を受ける

というのが一般的な迎え方であり、
育成環境や親犬の情報を確認できる仕組みが整っています。


Q3:展示販売が法律で禁止されていないのはなぜ?

日本では、展示販売そのものを禁止する法律はありません。
その背景には、ペット産業の経済規模の大きさや、
「すぐに買って帰れる利便性」を求める消費者意識があると考えられます。

法改正の動きもあるものの、
まだ社会全体での「命への向き合い方」の見直しが求められている段階です。


Q4:ペットショップの子犬はすぐに懐くって本当?

懐くように見える子もいますが、
それは「不安だから依存する」という状態かもしれません。

本当の意味での信頼関係とは、
落ち着いて自立しながらも、安心して人に寄り添える関係です。
その形成には、時間と適切な関わりが必要です。


Q5:流通が短いと健康面で何が違うの?

輸送回数が少ないほど、子犬の身体へのストレスが減ります。

  • 車酔い・下痢・食欲不振
  • 免疫力低下 → 感染症リスク増大

といったトラブルのリスクを避けやすくなり、
健康状態が安定しやすくなります。


Q6:どんなブリーダーを選べば安心なの?

以下のようなブリーダーは、信頼できる育成環境を持っている可能性が高いです。

  • 親犬の健康状態・性格を開示してくれる
  • 育成環境を見学できる
  • 引き渡し後のサポート体制がある
  • 子犬の「社会化」に力を入れている

見た目や価格だけでなく、「どう育てているか」で選ぶことが大切です。