①【選ぶ】親犬の選定と交配計画

命をつなぐための“選ぶ力”


導入

ブリーディングのすべては、「どの命をつなぐか」という選択から始まります。
トラストブリーディングにおける“選ぶ”とは、単に血統や外見を比較することではなく、
命に誠実であることを前提に、未来を託す判断を下すことです。

そのためには、FCIスタンダードの理解をはじめ、遺伝、気質、構造、健康といった多角的な視点が求められます。
そしてもう一つ欠かせないのが、犬たちの「心」と対話する感性です。
数字やデータでは測れない部分にこそ、命の真実が宿っています。

シルトクレーテでは、科学と哲学、理論と感情の両方を大切にしながら、
「この命をつなぐことが、未来のダックスフンドのためになるか」を常に問い続けています。


理念・考え方

私たちが行う“選ぶ”という行為は、単なる繁殖計画ではなく、
命の方向性を決める重大な責任です。

外見的な美しさだけでなく、構造・動き・精神性・血統の流れ──
そのすべてを総合的に見つめ、どの個体がどんな役割を持ち、
どの血が未来に必要かを静かに見極めていきます。

このプロセスの中で何よりも大切なのは、「かけない勇気」を持つこと。
犬が心身ともに万全でなければ、どんなに理想的な組み合わせでも交配は行いません。
ブリーディングとは、“繋ぐこと”よりも、“守ること”から始まる。
それがシルトクレーテの信念です。


実践内容

選定では、まず構造の正しさを見ます。
体高と体長の比率(オス1:1.7、メス1:1.8)、胸の深さ、首の伸び、尾の位置、前肢と後肢の連動性など、
FCIスタンダードに基づいた理想的なバランスを追求します。

しかし、どんなに構造が整っていても、心の安定がなければ本当の美しさは生まれません。
犬たちの表情、歩き方、他犬との関わり方、人との信頼関係──
そうした“生きる姿勢”こそが、未来をつなぐに値する資質だと考えています。

また、ドイツ純血ラインを継承しながらも、
遺伝的多様性を保ち、近交のリスクを避けるために血統を緻密に管理しています。
短期的な結果ではなく、100年先の理想像を見据えた繁殖設計。
それが、トラストブリーディングの核です。


シルトクレーテの基準と哲学

  1. FCIスタンダードに基づく構造的判断
     狩猟犬としての機能美を第一に。骨格・動き・柔軟性・密度を総合評価します。
  2. 血統の流れを読む力
     ドイツ純血ラインを基盤にしながらも、遺伝的多様性を確保。
     “同じ血を残す”のではなく、“価値を継承する”ことを目的としています。
  3. かけない勇気と命への誠実さ
     体調・年齢・精神状態に問題があれば、どんなに期待があっても交配は行いません。
  4. インブリードのコントロール
     近親交配を一律に避けるのではなく、目的を持って慎重に活用し、
     血統の安定性と多様性のバランスを取ります。
  5. オスとメス、それぞれの役割を理解する
     オスは表現力と力強さ、メスは柔軟性と安定性。
     どちらも欠かすことのできない“遺伝の柱”として評価します。

詳細解説

この「選ぶ」というテーマには、いくつもの専門的な要素と哲学が含まれています。
以下の5つのページで、それぞれの視点をより深く掘り下げています。

FCIスタンダード・構成の総合判断
形ではなく、機能を選ぶ。
狩猟犬としての構造美を追求するための、比率・骨格・動きに関する考え方を解説しています。

血統と遺伝的多様性
血統は“ブランド”ではなく、“命の地図”。
ドイツ純血ラインの継承と、遺伝的多様性を守るためのシルトクレーテ独自の血統管理を紹介します。

掛け合わせの考え方
理想を追うための“組み合わせのセンス”。
構造・性格・動きの補完性を重視した交配設計、そして「かけない勇気」の哲学について。

オス・メスそれぞれの役割と評価
性による構造と気質の違いを理解し、繁殖における役割を明確にすることで、血統全体の質を高めていきます。

長期的血統管理とインブリードコントロール
単世代の結果ではなく、100年後を見据えた血の設計。
近交係数や遺伝的多様性を科学的に管理し、命の流れを健全に保ちます。


次の章へ

「選ぶ」ことで方向が定まった命は、次の段階で“守られる”存在となります。
次の章では、母犬のケアや出産環境について、命の誕生をどのように支えているのかを紹介します。

次へ:②【育てる】母犬と子犬のケア・出産環境


まとめ

“選ぶ”とは、血統を選ぶことではなく、命の未来を選ぶこと。
その判断の一つひとつが、50年後・100年後のダックスフンドの姿を形づくります。

科学の裏付けと感性の直観。
理想と現実のバランス。
そして、犬への静かな尊敬の心。

それらすべてが重なったとき、初めて「トラストブリーディングの選択」が生まれるのです。