①-1【FCIスタンダード・構成の総合判断】

形ではなく、“機能美”を選ぶ。


導入

ダックスフンドという犬種を語るとき、
まず理解すべきは「美しさは機能に宿る」という原点です。

私たちが大切にするのは、見た目の派手さではなく、
“狩猟犬として無理なく動ける身体構造”を持っているかどうか。
それが、FCIスタンダードが本来示している「理想の姿」です。

トラストブリーディングでは、このスタンダードを
“飾りではなく、生きた基準”として日々の判断に生かしています。


FCIスタンダードに基づく理想像

ダックスフンドの標準は、世界共通の約束ごとです。
それは「ドイツの森で働くために生まれた犬」というルーツを守るための指針でもあります。

スタンダードが定める体高・体長・胸囲・動きの理想比は、
単なる外見の美しさではなく、狩猟に耐える身体機能の最適解です。

  • 体高と体長の比率:オスは1:1.7、メスは1:1.8
  • 深い胸とよく引き締まった腹部
  • しっかりとした前肢の伸びと、力強い後肢の蹴り
  • 滑らかに流れる背線と、自然に保たれた尾の高さ

これらは「見た目の型」ではなく、
実際に動いてこそ美しい身体を示しています。
“形が動きを生み、動きが本質を語る”──
それがシルトクレーテが理解するFCIスタンダードの精神です。


狩猟犬としての“機能美”

ダックスフンドの構造は、地中に潜り、獲物を追い詰めるために生まれました。
そのため、胴が長く脚が短いのは「愛らしさ」ではなく「必然」です。

  • 胴の長さは、狭い穴の中で方向転換するため
  • 前肢の力は、土を掘るためのもの
  • 首の長さは、獲物をくわえて持ち上げるため
  • 尾の位置と角度は、地中で引き上げられる際のバランスを保つため

このように、すべての形には理由がある
その理由を理解し、評価できる目こそが、
トラストブリーディングにおける「構造を見る力」です。


性差と構造の微差

シルトクレーテでは、性差も重要な構造要素として捉えています。
同じ血統でも、オスとメスでは骨格の密度や体の比率がわずかに異なります。

  • オスは、よりコンパクトで力強く、密度の高い骨格構成。
  • メスは、やや柔らかくしなやかで、わずかに体長が長い(1:1.8)。

この違いを理解せずに評価すれば、本来の美を見失います。
オスには「構築の完成度」を、メスには「生命の余白」を見ること。
それが、スタンダードの真意を読み解く第一歩です。


動きが教えてくれること

ダックスフンドの構造は、動きによって真価を発揮します。
止まっているときに完璧に見えても、動かしたときに崩れるなら、それは理想ではありません。

私たちは、犬が自然に走る姿の中に“答え”を見るようにしています。
前肢が地面を伸びやかにかき、後肢が正確に蹴り上げ、背線が波のように流れる──
そこに生まれる一瞬の「調和の形」が、本物の構造美です。

トラストブリーディングでは、この動きの観察を最も重視します。
動きの正しさは、健康と精神の安定の証でもあるからです。


シルトクレーテの観察基準

  1. 骨格の密度と柔軟性の両立
     骨が軽すぎても重すぎてもいけない。密度としなやかさの調和を重視します。
  2. 前肢と後肢の連動性
     前肢が伸びる分だけ後肢が蹴る。対称的で滑らかなリズムを持つこと。
  3. 背線の安定と首の伸び
     動きの中で首と背が一直線に流れる犬こそ理想。背線の波打ちは欠点と考えます。
  4. 尾の高さとバランス
     尾は飾りではなく、バランスを取るための“舵”。高すぎず、自然な位置が最良です。
  5. 精神の落ち着き
     動きに迷いや力みがなく、心の落ち着きが伝わること。構造と心は常に連動します。

トラストブリーディングの視点

私たちが理想とするのは、「美しい犬」ではなく、「無理のない犬」です。
その犬が地面に立ったとき、自然と力が抜け、
一歩踏み出した瞬間に“理にかなった美しさ”が現れる──
そんな身体をもつ犬を育てることが、最も誠実なブリーディングだと考えています。

FCIスタンダードは、そのための“地図”であり、“哲学”です。
数値や形ではなく、その背後にある思想を読み解き、
一頭一頭の命の中にそれを再現する。
それが、シルトクレーテの目指すブリーディングです。


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構造を理解したうえで、次に重要になるのは“血の流れ”です。
どんなに理想的な形を持っていても、遺伝的な裏付けと多様性がなければ、
その命は長く続きません。

次のページでは、シルトクレーテが行う
「血統と遺伝的多様性」について詳しくご紹介します。

次へ:①-2【血統と遺伝的多様性】


まとめ

構造を評価するとは、外見を判断することではありません。
それは、犬の身体に宿る“理”を見抜く行為です。

形は機能の結果であり、機能は心の安定の上に成り立ちます。
この三位一体の理解こそが、トラストブリーディングにおける構造美の本質です。