⑤-1【構造と動き】FCIスタンダードに基づく最終評価
形ではなく、機能の中に美しさを見いだす。
導入
犬の体は、止まっているときよりも、動いているときの方が真実を掴みやすい。
静止した姿だけでは、その犬の全体の流れや調和が伝わりにくいことがあります。
ただし、本当に完成された犬であれば、立っているだけでそのすべてが見えてくる──
それが理想です。
とはいえ、一般的には、動きの中こそ“構造と心の連動”が最もわかりやすく現れると考えています。
私たちが大切にしているのは、
美しく立ち、美しく動ける犬です。
立ち姿に誇りがあり、動きに自然な流れがある。
それは、機能美と精神性の両方が調和した“命の完成形”だと考えています。
ダックスフンドは、狩猟犬として生まれた犬です。
その本質を尊重しながら、見た目の整いだけでなく、
「どう生き、どう動くか」という生命のリズムに目を向けています。
理念・考え方
構造を見るということは、
「どう作られているか」を評価するのではなく、
「どう生きようとしているか」を理解することです。
骨格のつながり、筋肉の働き、関節の角度、尾の位置。
それらはすべて“生きるための設計”として存在しています。
トラストブリーディングでは、
FCIスタンダードを単なる審査基準としてではなく、
犬という命の設計図として読み解きます。
理想比率(体高:体長=オス1:1.7/メス1:1.8)、
前後肢の協調、背線の流れ、首の伸び、尾の位置──
それらを個別に評価するのではなく、
ひとつの動きの流れとして整っているかを重視しています。
実践内容
・動きの連動性を観察する
前後肢の動きがしなやかに繋がり、無理のない推進力が生まれているか。
前肢の伸びと後肢の蹴りが自然に噛み合うとき、
犬は静かな力をまとい、動きが呼吸のように滑らかになります。
・背線のしなやかさと流れ
背中は、体全体の動きをつなぐ“橋”のような存在です。
大切なのは、動きの中で背のラインが無理なくつながり、
推進力が後ろから前へ、スムーズに伝わっているか。
・首の伸びと姿勢の自然さ
首が無理なく伸び、前方への意欲がそのまま姿勢に現れているか。
引き上げではなく、自らの意思で上体を保てるかを見ます。
・骨格の密度と柔軟性
骨格の中に“しなやかな重み”があるか。
密度のある体は動きに芯を生み、柔軟性はそれを自然に包みます。
その両立が「質の高さ」として現れます。
・静止時の安定感
フリーステイの姿勢で、犬が心身ともに安定しているか。
立ち姿の美しさは、心の落ち着きの現れでもあります。
シルトクレーテの哲学
“形の美しさ”は、結果であると同時に、目指すべき目的でもあります。
理想的な構造を追求することは、犬の健康と機能を守ること。
そして、その結果として、自然な美しさが生まれます。
私たちは、動きを通して構造を理解し、
構造を通して、犬の心を見ます。
それは審査のための評価ではなく、
命が調和しているかを確かめる観察です。
「生きる形」と「動く姿」が一体となったとき、
そこに本当のダックスフンドらしさが宿ります。
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構造が整えば、次に見えてくるのは“心”です。
姿が美しくても、心が整っていなければ、その犬は本当には輝けません。
まとめ
動きは、言葉を持たない犬の“言葉”です。
姿勢や歩幅、尾の動き──
その一つひとつに、命のリズムが流れています。
見た目ではなく、動きで語る犬。
立ち姿と動きが一貫して美しい犬。
その自然さこそが、シルトクレーテが追い続ける理想の姿です。
